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優先情報チャンネルの研究について


〜「般若心経」〜
(無) 眼耳鼻舌身意 (む)げんにびぜつしんに
(無) 色声香味触法 (む)しきしょうこうみそくほう

〜「六根清浄」(ろっこんしょうじょう)〜
人間にそなわった以下の「六根」を清らかにすること。
五感に続いて「意識」を六番目に位置づけている。すなわち―
  1. 眼根(視覚)
  2. 耳根(聴覚)
  3. 鼻根(嗅覚)
  4. 舌根(味覚)
  5. 身根(触覚)
  6. 意根(意識)
この六番目の「意根(意識)」は心理学領域での研究に基づけば
記憶・思考・論理・直感・意識ないし統覚などの機能に分けられる。


優先情報チャンネルの研究は難しい…

15-16年間、優先情報チャンネルの研究を進めてきましたが、実は研究そのものが難しいことが分かりました。
あるとき臨床心理士養成大学院の院生さんに調査をお願いしたことがありましたが、次のような困難がありました。
  • ある課題を与えて、その結果について尋ね方が難しい…。

    たとえば「何々をイメージして下さい」と教示を与えたとします。すると調査協力者は「何々をイメージしよう」と協力してくれるのですが、その後でどのように尋ねるべきかが、ひどく難しいのです。つまり、「どんなイメージが見えましたか」と聴くと、それは視覚的な体験に限定した質問になってしまいます。また、協力者の方が「イメージが見えたのではなく、何となくそのイメージに関わる音が聞こえた」という体験をしていた場合、「…見えましたかと尋ねられたのに、聞こえた体験を話して良いのだろうか…」と疑心暗鬼になります。
    あるいは、「…手足に感触があった感じだが、そうした体感のことを話して良いのだろうか…」と困ることもあります。あるいは「えーと、イメージして下さいとお願いしましたが、それでどういうことを感じましたか」と尋ねると、「感じる」体験の話を誘導してしまいます。
     ということなので、結論としては「それでは、課題を与えられて、どうでしたか?」などと、かなり漠然と尋ねる必要があるのです。

  • 課題そのものが「イメージを誘導する」課題で研究ができるのか…

    「イメージ」とは多くの人にとって視覚的なイメージを意味します。そのため、課題の中で視覚的なイメージを誘導することになります。そうしたやり方で、多様な優先情報チャンネルの研究に繋がっていくのかどうかが、全く不明でした。
    しかし、ともかく研究していくしかないので、視覚イメージを誘導する中でも、それ以外の優先情報チャンネルに関わる反応が出てくるかを調べる…というように、研究の方向を切り替えました。
     それで恐る恐る進めてみると、何と!「視覚イメージを誘導する課題」であっても、音に関する聴覚的反応、身体の感じに関する体感的反応、様々な記憶内容、においや味覚の反応などなどが現れることがつきとめられたのです!
     こうした発見がなければ、優先情報チャンネルの研究はひどく遅れたことになりました。

  • 当初は予想していないほどの多様な反応が出てきてしまった…

    NLP(Neuro Linguistic Programming)神経言語プログラミングでは、視覚・聴覚・嗅覚味覚・体感などの基本的な情報チャンネルのどれが優先するか、という極めてシンプルな理解でした。しかし、少し研究を進めていくと、そんなに簡単なことではないことがすぐに見いだせました。ここでは簡単にふれるだけにしますが、優先情報チャンネルは単なる「感覚」レベルには留まらず、外界や内界に関わる「関わり方のモード」をも含んでいる場合があったこと、です。(とりあえず意味不明?とは思いますが、先に進みます)

  • 複数の優先情報チャンネルが関わっていて、それぞれの優先性は異なる度合いで優先していた…

    たとえば、視覚が優先していたとしても、たとえばその次に聴覚が優先している…といったように、いくつかの基本的な感覚の間には、優先性についての「順序性」があること。そのため、仮にあなたが「視覚優先」だとしても、それが極端に優先しているのか、あるいは視覚優先度が90%だとして、聴覚優先度が70%…といったように、ある種の「分布」を想定する必要があったこと、です。

実験的研究の例 1


研究論文に関心のある方は下記のファイルをご覧下さい。

「優先コミュニケーション・チャンネルの心理学的重要性 : 関連性評定質的分析を用いた検討」 (2011) PDF


 これは「青い湖」課題という方法を用いて行った実験研究です。調査協力者が書いた「感想」を関連性評定質的分析という手法で分析して、与えられた課題からどの程度、多様な情報チャンネルが得られるか、また、どのような優先情報チャンネルが出現するかを確認した研究です。
 
   
 
 研究の専門的な内容は控えますが、この図から分かることは、「青い湖」という視覚的な課題であっても、必ずしも視覚的な反応には限定されず、匂いや音、体感的な反応が出てくること、です。
 こうした研究から、優先情報チャンネルが多様であることは一目瞭然となりましたし、細かく眺めていくと、一つの感覚だけが優先的である場合と、いくつかの感覚チャンネルが似たような優先性をもっている場合もあることが分かりました。
 
 
 ここからは少し議論を飛ばしますが、単に「視覚型か聴覚型かそれとも…」といった単純な判定では不十分であることが明らかになった、とだけ述べておきます。  
 
 こうした発見から、次の研究をどのように進めるべきかについて難問が発生しましたが、それについてはまたあらためて説明することにいたします。
 
 
   

関連する研究 2

「身体性について考える― 優先情報チャンネルとミラー・ニューロン」 (PDF)
 日本人間性心理学研究、第31巻第1号、2013

 これは2012年開かれた日本人間性心理学会第31回大会シンポジウムで講演を行った内容です。
 この中で、優先情報チャンネルについて簡単に紹介しています。
 内容として特徴的なことは、日本国内ではあまり関心を呼んでいない「ミラー・ニューロン」が国際的には学問的に大きなインパクトで様々な領域で研究されていることを取り上げたこと、ダブルバインドで紹介されるG.ベイトソンの例を「優先情報チャンネルの食い違いによるもの」として例示していることです。
 身体性が極端に劣位にある母親によって誤解されてしまう、日常的な身体性レベルにある統合失調症の息子のお話し…として紹介しています。これは、優先情報チャンネルの食い違いによるミス・コミュニケーションの例として、共通認識をもってもらいたいと考えています。
 
(2/25, 2017)

 


 

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