検定力分析ソフト G*Power について

葛西 俊治
(元・札幌学院大学人文学部臨床心理学科教授 )


 実際に分析してみる 

検定力分析のフリーソフト G*Power が公開され第3版まで提供されています。
このソフトは「非商業的プログラムで無料でダウンロードできる a noncommercial program that can be downloaded free of charge」とあり、「現場の研究者や応用統計学の学生にとって役に立つツールとなる」と記されています。(下記の論文)
というわけで、卒論や修論作成や論文執筆に際して役立つように使い方を分かりやすく説明したいと考えました。

* G*Powerの計算ソフトは、ハインリッヒ・ハイネ大学デュッセルドルフ校の実験心理学研究所
Windows XP/Vista版, Mac OS 7-9版をサイトからダウンロードできます。(英語)
※2019年頃はこのサイトには入れないことがあったので、院生用にファイルを載せておきました。
[G*Power 3.1.9.2 for Windows] (zip ファイル) 2009-2014
[G*Power Manual] (PDF)
[G*Power Short Tutorial] (PDF)
○現在は上のハインリッヒ・ハイネ大学のサイトからG*Powerのサイトに入れます。
 バージョンは「3.1.9.7 (Windows10)」、「3.1.9.6 (macOS 11)」となっています。(3/23,2021)

*上のサイトに入り、少し下に進むと「Download」の部分があります。
Download G*Power 3.1.9.2 for Windows XP, Vista, 7, and 8 (32 and 64 bit) (about 20 MB)
これをダウンロードして下さい(Windows10でも特に問題なく動きます。7/1, 2016)

* ダウンロードと使い方についての簡単な解説(日本語)を作成している方がおりました→ [こちら]にあり、参考になります。(PowerPointファイル)

 G*Power3 のバージョンについて、その検定力分析の仕様や基本的な内容は下記の論文にあります。
 
Faul, F., Erdfelder, E., Lang, A.-G., & Buchner, A. (2007). "G*Power 3: A flexible statistical power analysis program for the social, behavioral, and biomedical sciences. Behavior Research Methods, 39, 175-191. (PDFファイル)

 ダウンロードして稼働させるのは特に問題ありませんが、実際に検定力分析を行う際には、設定個所の意味と設定方法について理解している必要があります。このコーナーでは、以下の示すような基本的な検定方法について、実際にどのように設定をして結果を得るのかを具体的に説明していきます。
 (少しずつ追加していくことになります)




 検定力の事前・事後の分析 


G*Powerソフトには、実際には5種類の検定力分析が用意されていますが、通常は以下の三つを用います。一つは「A Priori Power analysis 事前の検定力分析」、二つ目は「Post hoc Power analysis 事後の検定力分析」そして、三つ目は、実際の研究の前・後いずれの場合にも参考のために分析する「Compromise Power analysis 折衷的な検定力分析」です。

  1. A priori analysis 事前の検定力分析
    これはどの程度のデータ数を用意すればよいか、研究に先立って見当をつけるために用いる検定力分析です。[α ES(Effect Size 効果量) 1-β(検定力) ] の三つを設定して、残りの変数である[データ数N]を算出するものです。

  2. Post hoc analysis 事後の検定力分析(あるいは「後付けの分析」)
    研究を終えた後で、[α ES(Effect size効果量) データ数N]の三つを利用して、[1-β](検定力)を算出するものです。過去に行われた研究がどの程度の「検定力」をもっているのかを確認するために用います。

  3. Compromise analysis 折衷的な検定力分析
    ここではα値とβ値との比率を用いています。α=0.05 ( 5%)という数値で、1−β=0.80 (J.Cohenによって慣例とされた検定力)ならば、β=0.20ですから、β/αの比率は「 4 対 1 」となります。つまり、「正しい対立仮説を採択しないでいるβ過誤」と「誤っている帰無仮説を採択するα過誤」対比では、β過誤の可能性を4倍許容していることを意味します。
    このβ/αの比率を[1」とすると、α=0.05ならば、β=0.05なので、検定力(1−β)=0.95となります。G*Powerの図では、検定力Powerが0.95とになっていたのにはこうした背景があります。

    * すでに書きましたが、検定力Power (1−β)=0.95 というのはかなり高い数値で、これを実現するためには、(効果量の大きさにもよりますが)データ数はかなり大きくなければいけません。そうしたことも勘案して、J.Cohenは「検定力=0.8」を慣例として提唱したわけです。
  4.  

 G*Powerの設定画面の説明 

 
  • 次のような画面が表示されます。「赤い四角」で囲んだ個所をクリックしてみてください。一番下の「説明欄」にその場所の説明が表示されます。表示をクリアするときは、左フレームの一番下にある ―(最下行の説明欄をクリア)― をクリックしてください。

    入力パラメータ(設定値)と結果パラメータ(算出された数値)の種類と内容は、用いる検定法によって少しずつ異なります。ここでは「二つの独立したグループについての、平均値の差のt検定」の画面を例にして説明しています。

    中心および非心分布 検定力分析の結果 検定で用いる分布など 統計的検定の方法 検定のタイプ 入力パラメータ 出力パラメータ 範囲内の値の作図 計算実行
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