札幌ダンスセラピー研究会 2002



  ダンスセラピーについて  

  3.ダンスをすればいいのですか?  

普通、ダンスというとモダンダンスやバレーやフォークダンスや盆踊りやブレイク・ダンスや…様々な「ダンス・踊り」をイメージしますが、それは「狭い意味でのダンス」と言えます。ダンスセラピーでは、多くの場合、特定の踊りの踊り方を習得したり、決まった振り付けなどを覚えたりすること自体にはあまり重きををおいていません。
覚えてはいけない…ということではありませんが、「指示されたとおりにできなかったらどうしよう」などと不安を起こさせたり、「こんなことできないでどうするの!」などとあまり効果的とは言えない叱責を呼び起こすなどのマイナス面への配慮が、大事な要素になっているためでもあります。
「踊りをマスターしていくことによって…、心理的な成長や身体的な能力の開発や、あるいは人間的な成長を目指していく」というイメージも浮かんできます。それも重要なアプローチですが、しかし、それもあくまでもダンスセラピーにおける「アプローチの一つ」に過ぎないと言えるでしょう。

「広い意味でのダンス・踊り」は、すでに書きましたが、「動きや動作」だけではなく、「姿勢」といったような「その人のあり方」までも含むものです。ですから、特定のダンスの練習をしているように見えるエクササイズもあれば、ただ寝転がっている風にしか見えないようなセッション(床や大地との接触は身体性の開発には重要な要素です)や、あるいはただ立ち止まっているようにしか見えないエクササイズ(身体を静止させるのはかなり高度な身体的能力です)もあったりします。
このように範囲が広いので、ダンスセラピーの実際の内容は、個々のダンスセラピストによっても異なるし(得手不得手や好き嫌いも関わるかもしれません…)、セッションに参加している人がどんな人で、どんな問題をもっているかによってもその都度、異なっていると言えます。それでも、どんな要素があるか、一応まとめてみると―
  1. 身体的感受性を深めること―
    からだの感覚を深めたり、動き方などに気がつくなど「身体性」に
    関わることを促進します。
  2. からだを使って遊ぶこと―
    「遊ぶ」こと!スポーツと根本的に違うのは「鍛える」ことは優先事項
    ではないことです。
    日常的な問題や困難を遊びの中で一時棚上げにして、伸びやかに
    過ごす体験となります。
  3. 他の人との関わりを深めること―
    からだを使った遊びや踊りの中で、他の人とのやりとりを体験していきます。
    関わりの中で、社会的技能(対人関係的な能力 Social Skill)の実践
    訓練的な効果もあります。
  4. 自発性・創造性を養うこと―
    手本通りにやってもらうことだけではなく、自発的で創造的な動きや
    あり方を引き出します。
    素敵であったり芸術的であったり、生きている世界が広がることを
    目指しています。
  5. 身体的な能力を維持・展開し養うこと―
    身体を使っていろいろなことをするので、身体的な能力、感覚や筋力
    などに良い効果があります。
「ダンスセラピー」は本来的に「動きに基づいて行う心理臨床的な」アプローチなので、5番目の「身体的能力を養うこと」は最優先事項ではありませんが、大変によい効果が得られます。
スポーツや筋肉トレーニングなどは「目的に向かって邁進する」といった「目的至上主義」のようですが、ダンスセラピーでは、さまざまな内容と種類の身体的体験をすることによって、自分自身を癒し成長させる「糧(かて)」となることを目指しています。

なお、心理学的研究に基づいて発展させてきた「セラピーとしての舞踏ダンスメソド」では、このようなことを実現するために「からだ遊び」「リラクセイション」「対峙」という三つの段階・要素から構成されています。

*無断転載禁止   2/21,2002修正 (C)葛西俊治